埼北で6次産業にチャレンジ

地域の人々の温かさが励みに

2011年川口市→熊谷市へ移住

坂井孝行さん(34歳)、絵理さん(同)夫妻は、熊谷市に暮らして5年ほど。農産物の生産・加工・販売を行うTATA GREEN株式会社・代表取締役である孝行さんは、市内樋春で「さつまいも専門店 芋屋TATA」を営んでいます。現在、立ち上げて5年目を迎えた事業とともに、1歳8か月の長男・壱哉くんの子育てにも奮闘する夫妻に、埼北で暮らすことの『リアル』をうかがいました。

現在、子育て中
“都会での生活が想像できない”
ほど、暮らしやすい

坂井さん一家

「結婚当初は、お互い会社員でした。熊谷に夫の実家があり、祖父の土地で農業を始めたことは、もちろん知っていましたが、まさかそれが本業になるとは。当時勤めていた証券会社を辞めたことも、事後報告だったんですよ。今となっては笑い話ですが、本気で離婚届を用意したりして」。夫婦で話し合い、孝行さんの事業に対する思いを理解した結果、熊谷への移住を決めた絵理さんは、会社員を続けながら夫のチャレンジを後押ししました。

壱哉くんを授かって母となった今、夫の事業にも積極的に協力する絵理さん。「学生時代から『都会での生活』を思い描いていましたから、夫の思いを聞いた当初は、正直、戸惑いもありました。けれども、子育て中の今、熊谷はとても暮らしやすい。地域の方々の温かさ、子育て世代に対する優しさを感じる場面も多いですね。結果的には、来て、暮らして、本当によかったと思っています」と話します。

そんなふうに移住の経緯や埼北での暮らしを語る妻、絵理さんに対し、事業を立ち上げ、移住するに当たって「ある約束」をしたという夫、孝行さん。詳しい話を聞いてみました。

トレーダーから、農業へ転身
「農業=かっこいい」と思われる事業へ

坂井孝行さん

第1次産業とされる農・水産業者が、食品加工、流通、販売にも業務展開することを指す「6次産業」。農作物の中でもサツマイモに特化し、6次産業化して事業展開するのが「TATA GREEN」です。孝行さんが農業、そして6次産業へと踏み出すきっかけとなったのは、なんと“リーマン・ショック”だったといいます。

「デイトレーダーだった先輩への憧れもあり、大学卒業後から約6年間、証券会社に勤務していました。営業、トレーダーとして働く中、国際的な金融危機となったリーマン・ショックを経験。日本の将来、特に『食』や『農』に対して危機感を持ったんです。そこで、農業にチャレンジしてみようと、祖父の土地の開墾を始めました。農地ではない上に、自分は素人。いろいろ苦心しましたが、農業がどんどん楽しくなり、事業化への夢がふくらんでいきました」と、孝行さん。

サツマイモは、農業をスタートさせた祖父の土地にマッチした作物だとか。「まずは、土地柄、地質に合ったサツマイモに特化し、『農業=3K』のイメージを払拭できるような事業にしようと会社を設立しました。おいしくて、安全なものを生産、加工し、たくさんの人に知ってもらって、買ってもらう・・・。事業計画を立て、一歩一歩進めてきました」。次世代の人たちに「農業って、かっこいい! 」と思ってもらえる事業展開をしたいと、熱く語ります。

事業を広げていく上で、インターネット、SNSが大きく役立ったといいますが、それ以上にありがたく感じたのは地域の人々の支え。孝行さんは「若い、新参者の自分に対して、みんな、温かかった。農業、商業に関係する地元の方々、買ってくれるお客様に支えられていると実感します」と、感慨深げに話します。今秋には、事業をさらにステップアップさせる予定です。

熊谷だから・・・できたのかも?!
暮らし、事業ともに満足度◎

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熊谷に移住し、事業を本格化させる際、孝行さんは絵理さんにこんな約束をしました。「農業を事業化し、自分のやりたいことを分かってもらうために、妻との話し合いの中で『3年間で、埼玉県一と呼ばれるような6次産業事業にする』『事業のために借金はしない』と、決意表明しました。だから、一緒に来てほしい、と !! 自分の行動や言葉で、何とか理解、共感してもらえた、かな? (笑)」と、照れくさそうに話す孝行さん。

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「移住、事業スタートから、現在に至るまで・・・。見えない何かに導かれるように、ここまで来ました。その地が、熊谷だからできたのかもしれません」。そんな孝行さんの言葉に、絵理さんもうなずきます。坂井さん家族にとって、埼北・熊谷での暮らしは「満足度◎」と言えそうです。

坂井さん夫妻が営む「さつまいも専門店 芋屋TATA」では、低温でじっくり焼き上げた焼き芋をはじめ、味わい深い干し芋、芋ジャムなど、自社生産のサツマイモを使った商品を多数販売しています。店名の「TATA(タタ)」は、ラテン語でお父さんを意味する言葉。また、会社のモットーである「True Agriculture is Try and Activity」の頭文字にもなっています。

埼玉県熊谷市樋春

坂井孝行さん・絵理さん・壱哉くん